バイヤーズガイド
射出成形金型の見積依頼に必要な資料
見積が遅れる原因は、たいてい同じいくつかの情報不足です。金型メーカーが正確に見積るために本当に必要な資料と、それぞれが欠けたときに何が起きるかをまとめました。
見積が資料に左右される理由
射出成形金型は説明ではなく形状から見積ります。レンダリング上は似て見える二つの部品でも、片方にスライドが必要なアンダーカットがあれば金型費は三倍変わることがあります。情報が足りないとき、金型メーカーの選択肢は二つだけです。仮定するか、質問するか。仮定は後で変わる見積を生み、質問は遅延を生みます。
以下は価格への影響が大きい順に並べています。三つしか送れない場合は、上から三つをお送りください。
金型価格を決める十の要素
| 項目 | 価格に影響する理由 |
|---|---|
| 3D部品データ | すべてはここから始まります。肉厚、抜き勾配、アンダーカット、パーティングラインはすべてモデルから読み取ります。STEPまたはIGESが最適で、STLは初見の確認には使えますが正確な測定はできません。 |
| 取り数(キャビティ数) | 最も影響の大きい要素です。4個取り金型は1個取りの4倍ではなく通常2〜2.5倍で、必要な成形機のトン数も変わります。 |
| 年間数量 | 取り数と鋼材の選定を決めます。年2万個と年200万個ではまったく別の金型になります。 |
| 樹脂・合金 | 材料ごとに収縮率が異なるため、鋼材の加工寸法も変わります。ガラス繊維入り樹脂は摩耗性が高く、より硬い鋼材が必要になります。 |
| 想定金型寿命 | つなぎの型ならP20、数百万ショットなら焼入れH13やS136を使います。細部ではなく、鋼材と価格を決める判断です。 |
| 公差 | 一般公差なら費用は抑えられ、一部だけ厳しいのも問題ありません。ただし全体を厳しくすると、仕上げと検査の工数が何倍にもなります。 |
| 表面仕上げ | SPI A1鏡面磨き、シボ仕様(MT/VDI番号)、または加工肌のまま。磨きの工数はそのまま費用になります。 |
| ゲート・エジェクタの制約 | 特定の面にゲート跡やエジェクタ跡を残せない場合は、最初にお知らせください。ホットランナーやパーティングラインの変更が必要になることがあります。 |
| ランナー方式 | コールドランナーは製作費が安く、ホットランナーは初期費用が高い代わりに部品単価が下がります。数量で判断します。 |
| 成形機仕様 | 既存の成形機で生産する場合、その型締力・タイバー間隔・エジェクタ配置がモールドベース設計を制約します。 |
まだ決まっていない項目があっても — それが普通で、待つ理由にはなりません。今ある資料だけ先にお送りいただき、残りは未定とご記入ください。妥当な仮定を置いて見積り、その仮定を明記しますので、仮定が違った場合に何が変わるかを正確にご確認いただけます。
チェックリスト
チェック済みの項目は、これがないと見積れない資料です。
- 3Dモデル — STEP、IGES、Parasolid、STLネイティブCADも歓迎です。部品ごとに1ファイルでお願いします。
- 目標年間数量、または総数量おおよその範囲で十分に金型の規模を決められます。
- 樹脂・合金グレードまで分かれば理想的です — 「ABS」と「PC/ABS 30% GF」では金型が変わります。
- 重要寸法を記した2D図面本当に重要な寸法だけで結構です。データムを明記してください。
- 想定金型寿命(ショット数)プロジェクト期間をお知らせいただければ、こちらで逆算します。
- 表面仕上げ・シボSPI等級、MTまたはVDI番号、もしくは許容範囲の参考品の写真で結構です。
- ゲート・エジェクタの制約どの面が外観面で、どの面に跡を残せないかをお知らせください。
- 色および二次加工パッド印刷、組立、インサート、超音波溶着など。
- 成形機情報(貴社設備で生産する場合)型締力、タイバー間隔、エジェクタ配置、射出容量。
- 希望する製作拠点中国、ベトナム、またはどちらでも — 納期と関税に影響します。
- 目標価格と目標納期値引き交渉のためではなく、実現可能かを正直にお伝えするために伺います。
受け取るべき内容
比較に値する見積は数字だけではありません。当社の見積には次を含みます:
- 金型価格(取り数と鋼材を明記)
- 提示数量での部品単価(総保有コストを確認いただけます)
- 納期(T1サンプルまでと出荷までを分けて表示)
- 発見したDFM上の問題 — 薄肉、抜き勾配不足、スライドが必要なアンダーカット
- 当社が置いた仮定(資料で未確定だった部分について)
見積を比較する際、最後の項目が最も重要です。コールドランナー2個取りを前提にした安い金額と、ホットランナー4個取りを前提にした高い金額は、同じ条件ではありません。
見積が遅れる五つの原因
- 3DモデルではなくPDFのみ。図面では断面が取れず、肉厚も確認できません。
- 数量の情報がない。数量がないと取り数は推測になり、取り数が価格の大半を決めます。
- 基準のない部品に「一般公差」とだけ記載。他部品と嵌合する形状であれば寸法を明記してください。
- 誰も触れなかったアンダーカット。多くは解決できますが金型構造が変わるため、見積後よりも初日に共有いただく方が得策です。
- どの部品の金型が必要かを示さないアセンブリファイル。
ファイル送付について
ファイル交換の前にNDAを締結できます — 最初のメールでお申し付けいただければ当日中にお返しします。製品データは、その案件を担当するプロジェクトエンジニアのみが閲覧します。
CADファイルが大きい場合は、フォームではなく直接こちらへお送りください: [email protected] プロジェクト名を併記いただければ、ご依頼と紐付けます。
